仙台高等裁判所 昭和26年(う)298号 判決
(前略)……被告人が変態性慾の満足を得る目的で本件犯行をなしたと認むべき確証はない。……(中略)……動機の点は、成程、殺人の如き事実にあつては、犯罪事実の認定上必要欠くべからざるものである。しかし、犯罪と被告人との結びつきを証明するものが、被告人の法廷前の自白のみしかない案件では、動機と認むべきものが証拠上存在しないか、或は存在すると認められても該動機と犯行とが経験則上齟齬するが如き場合には、これを犯罪の証明不十分とすることも考え得るか、犯罪と被告人との結びつきを確固たらしむるに足る客観的証拠の存する案件では、動機と目すべきものが一応推認され、且つその推認された動機と犯行とが経験則上齟齬しない場合に、動機の不明確の故のみを以つて、直ちにこれを犯罪の証明十分ならずとなすが如きは、むしろこれこそ経験則乃至実験則に違背するものというべきである。